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ベンチを使った朝の会について その2  ベンチに座らない子をどうするか

 前回の記事でも書いたが、ベンチを使い始めたのは昨年度の2学期からだ。夏休みの間に近くのホームセンターでベンチを購入し、組み立て、2学期に臨んだ。ベンチを導入したのは当然、イエナプランや岩瀬直樹先生の実践から影響を受けたからだ。

 

 しかし、当然ながら最初から上手くいくわけがない。そもそも、どのような実践であっても導入し始めた頃は上手くいかないものだ。特に「憧れ」を抱いて行う実践は、「理想的な状態」が頭の中で出来上がってしまっているので、どうしてもそれとのギャップが浮き彫りになって、苦しくなってしまうことが多い気がする(自分に限ったことかもしれないが)。ちなみに、今の教育関係の出版物は、基本的に「完成された状態」を読者に届けるというパターンが多いので、上手く行かなかったときに苦しくなってしまう人は多いような気がするが、どうなのだろう。このことはまた違うときに掘り下げてみたい。

 

 では実際にどんなことで難しさを感じたのかというと、次のようなことが挙げられる。

 

①ベンチに座ってみたものの、何をしたら良いのかが分からない。

②ベンチに座った子どもたちが、落ち着かない。

③ベンチに座らない子がいる。

 

 ①は、新しい試みに起こりがちなことだ。手段が目的化してしまっていたのだろう。まあ手段が目的化することなど当然発生することなので問題はない。岩瀬さんやKAIさんのブログなどを読んで、自分なりの朝の会を構築していった。

 ②は、低学年で起こりがちなことだ。ベンチはどうしても隣同士の距離が近くなって、過刺激な状態が多くなってしまう。特に男子が、その刺激に反応して、場と関係のない話を始めたり、ときにはふざけて暴れたりする。こういったときは、直接注意することもいいが、あまり注意が増えると場が冷えてしまうので、例えば低学年でよく使われる手遊び歌で注意をこちらに向けられるようにするのがいい(自分はあまり知らないが)。朝の会の時間を、できるだけ短くするというのも重要だ。数ヶ月が経てば、子どもたちは必ず落ち着いて話が聞けるようになる(と思う、たぶん)。

 

 さて、問題は③だ。この「ベンチに座らない子がいる」というのが、自分がベンチを使った朝の会をしていくにあたって、いちばん苦労した点だ。

 ベンチを使った朝の会を始めるにあたって、自分の頭の中には、子どもたちがベンチに座っている状態が描かれていた。それがこの実践のスタート地点だと思っていたのだ。しかし、実際にやってみて、それが甘い考えであったことを痛感する。ベンチに座らない子がいるのだ。考えてみたら十分あり得ることなのに、自分はなぜかその可能性を考慮していなかった。きっと様々な本や映像などを通して、イメージが固定されてしまって、その枠の外を考えることができなくなってしまっていたのだろう。

 ベンチを使った朝の会を行うに当たって、この「座らない子がいる」という状態は、なかなか苦しいものがある。ベンチに子どもたちが集まるということは、普段使っている座席には、基本的には誰も残っていないはずだ。しかし、ベンチに座らない子がいるということは、誰もいない席に1人だけぽつんと残されている状況が生まれる。その光景は担任にとって苦しい。その子が学級集団から疎外されているかのように感じられるからだ。当然、ベンチを使ったから学級集団に入りづらくなったわけではなく、ベンチを使って一カ所に集まったから「入りづらさ」が可視化されただけのことである、と認識することもできるだろう。しかし、それでもやはり、集団には入れない子どもの姿を目の当たりにするのは、苦しいものがある。

 

 では、子どもはどんなときにベンチに座らないのだろうか。自分は次のような理由が挙げられると考えている。

 

①他にやりたいことがある。

②集団が苦手。

③他の児童との関係性が悪い。

④集中力が続かない。

 

 ①については、声をかけて、何をしているのか、どこまでやったら座れるのかを聞くのがいいだろう。②と③については、なかなか対応が難しいが、誰の隣なら座れるのかなど聞いたり、子どもに声をかけてもらったり、じっくり取り組んでいくことが大切だ。④は最初はベンチに座っていたものの、ふらふらと他のところに行ってしまう場合だが、これについては自分はそんなに気にしなくて良いと考えている。

 

 ベンチに座らない子への対応は、ヒデゥンカリキュラムを強く意識して行わなければならない。そしてここが非常に難しい。例えば放っておくならば、「あの子は放っておいてもいいんだ」というメッセージを子どもたちに与えてしまう。叱るならば、「ベンチに座らないあの子はダメな子なんだ」というメッセージを与えてしまう。つまり、放っておかず、しかし無理強いしないようなバランスで対応しなければならないのだ。当然ながらこれが非常に難しい。自分も本当に苦悩した。

 自分の場合、最初に一声かけてみたり、ある程度会が進行してから呼びかけてみるとか、とにかくあの手この手で働きかけ続けた。それがすぐに実を結んだわけではないが、とにかく担任として、気にしているということを周りの子どもたちに伝え続けることが大切だと考えていた。ただ、当然それを日々繰り返していくのは、かなり困難だ。苦しくなるときもある。

 もし、支援の先生など、教室に入ってくれる先生がいて、サポートしてくれるなら心強いだろう。ただ、こういう取り組みを理解できていなければ、マイナスの効果が出てしまうから気をつけたい。どう伝えれば良いのかが難しいのだけれども。

 

 ベンチに限らず、今の学校では、「参加しない児童をどうしたらいいのか」ということが常に難しい問題としてあると感じる。特に年度初めの頃は、毎年そのような児童への対応にかなりの労力を注ぐ必要がある。もしかすると自分が勤務してきた学校に限ったことなのかもしれないが、もし全国的にそのようなことが起こっているなら、何が原因なのかを確かめていく必要があるだろうなと思う。