世の中

教育などについて考えたことを書きます

ベンチを使った朝の会について その1

f:id:namyoun:20210310085240j:plain

 
 3学期の途中から、ベンチを使っての朝の会を始めた。ベンチを使っての朝の会は、昨年度の2学期から始めていたが、今年度はコロナの影響もあって、ずっとできない状態が続いていた。厳密に言うと絶対にできないというわけではなかったが、校内の状況を見て、やらないという判断をせざるを得なかった。しかし、校内の空気や地域のコロナの状況から判断し、3学期からベンチを使っての朝の会を開始することにした。
 
 今年度初めてベンチでの朝の会だったが、今年度は持ち上がりで、学級(3年生)の半数の児童が前年度にベンチでの朝の会を経験していたので、導入は予想よりスムーズにいった。自分自身も、昨年度何度もやっていたので、体に染みついていたのかもしれない。
 
 ベンチでの朝の会は、大まかには以下のような流れで行った。
 
①あいさつ係さんの号令による「おはようございます」
②近くの友だちと健康チェック(岩瀬直樹先生の実践を真似している)。続けて、昨日の放課後に何をしていたのかを話す。
③くじアプリを使ってランダムに2〜3名を指名して、スピーチを行う。
④学級通信を配って読み聞かせ。
⑤今日の予定。
 
 時間で大体15〜20分ほど。1時間目のチャイムが鳴ってから始めるので、当然ながら1時間目はその分、他にできることは少なくなる。
 スピーチは、ランダムに指名するので、なかなか思いつかない子もいたが、そのときは次の子をくじアプリで選んで、先にスピーチをやってもらった。その間に、何を話すのかを決めることになる。全員がその間に何を話すのかを決めることができていた。
 スピーチについては、質を求めることは全くなかった。ほとんどの子が「きのうそろばんの習い事に行きました」程度の短いスピーチだったが、それ以上長いものを求めたりすることは全くしなかった。質を求めれば、子どもたちにプレッシャーがかかってしまい、場が固くなると思えたし、また短いものであっても、そのあとの質問で、内容が補完されることが多かったからだ。
 もう少し突っ込んだ話をすれば、自分はベンチでの朝の会を、あくまで「子どもたちを鍛える場所」としてではなく、「心地よい場所」として機能させたいと考えていた。お互いの顔を見て、他愛もない話をする。その中で、仲良くなってもらいたい、居心地の良さを感じてほしいという願いがあってやっていた。ちなみに、「他愛もない話」については、例えば誰かのスピーチで「お好み焼きを食べた」という内容の話があったら、「お好み焼きと焼きそばだったらどっちが好きですか、近くの人とお話しましょう」みたいに言って、生みだしていた。これも岩瀬直樹先生から教わったことだ。こういった他愛もない話を積み重ねることが、結局のところ「民主的な学級」への近道であることが、今年度を通してよく分かったと感じる(自分の学級が民主的などとは到底思わないが)。
 
 ところで、ベンチでの朝の会を始めて、学級が大きく変わったかというと、なかなか歯切れの悪い返答しかできないなと思う。なぜなら、こういった取り組みは、その効果を実証することが難しいからだ。あくまで体感的な「効果」しか語るしかできない。ただ、あくまで体感的な体感的な効果であると断った上で言えば、その効果はあったと思う。その効果には、次のようなものが挙げられる。
 
①授業ではなく子どもたちのふだんの生活から1日を始めることによって、学校外の時間との接続をスムーズに行える。
②先生中心型のクラスから、中心のないネットワーク型のクラスへの転換を促せる。
③学級の雰囲気がよくなる。
 
 ①については、リスクがある。ふだんの生活を持ち込むことによって、生活の中に潜む「格差」が明らかになって、それによって児童が苦しむということは、十分考えられる。地域によっては、あまり積極的に持ち込まない方がいい場合もあるだろう。当然ながら、「話したくないことは話さなくていい」というルールは常々口にし続けたい。
 
 ②については、当然ながらベンチで朝の会をすれば中央集権型の学級から脱出ができるなどと言いたいわけではない。ただし、子どもたち全員が黒板の方を向いた状態で朝の会をしたり、あるいは班の形で朝の会をするよりも、ベンチを使ったサークル型の朝の会は、形式で言えば「民主的」であることも確かであるとも思う。そういった形式を重視することは、時に大切であるというのが自分の考えだ。それは、あくまで自分しか分からない程度の小さな納得感なのかもしれないが、担任として子どもたちの前に立ち続けるのならば、そういった小さな納得感であっても大切にすべきだと自分は考えている。
 
 ③については、これこそ正に教師の主観でしかないだろう。しかし、普段の席からベンチに移動する行為は確実に子どもたちの関係性に流動性を与えるし、その流動性が新しい関係性の構築に繋がっていくというのは、納得できるものがあるのではないだろうか。
 
 ちなみに、ベンチを教室に持ち込むことには、上記の3つ以外にも効果や意義があるが、この記事においては触れないでおく。また、運用上難しい点も、別の記事で指摘したい。