世の中

教育などについて考えたことを書きます

図形楽譜を使ったワークショップ

数年前、子どもたちに対して図形楽譜を扱ったワークショップを行ったことがありました。
参考になるかもしれないので、少しそのことについて書きたいと思います。
 
対象学年は小学1〜3年生、人数は30人程度でした。
子どもたちには、新聞紙や空き缶など、身の回りにある音の出るものを用意してもらいました。
事前に楽器を作る活動を行っていれば良いかもしれません。
 
まず最初に行った活動は、「音を聴く」練習でした。
内容は「1分間目を閉じて、どんな音が聞こえてくるのか耳を澄ます」というものです。
1分間経ったところで目を開き、どんな音が聞こえてきたのかを発表してもらいます。
鳥の声や車の音など、様々な答えが出てくると思います。
中には「聞こえた?」というようなものもあるかもしれませんが、それも大切な意見なので書いておきます。
これは耳を澄ます練習と同時に、子どもたち全体にしっとりとした静けさをもたらすこともねらって行いました。
 
次に行ったのは、簡単な図形楽譜を使った演奏活動です。
子どもたちのほとんどは、図形楽譜に触れるのは初めての様子だったので、簡単なインストラクション・導入として行いました。
ホワイトボード(黒板)に簡単な曲線を描きます。

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こんな感じです。
縦軸が音の大きさを、横軸が時間を表しています。
子どもたちに対しては、これが何かを問い掛けつつ、説明を行います。
そのあとはみんなで実際に演奏を行うことになります。
こちらは何か長い棒などを縦に持って、横軸方向に沿って動かしていきます。
子どもたちはそれに合わせて、手拍子を行います。
山が高くなったら音を大きく、低くなったら音を小さく、という感じです。
慣れてきたら、もっと複雑なものに書き換えても良いですし、また子どもに棒を持たせて、指揮をやってもらっても良いでしょう。
手拍子を「あー」などの声にしても面白いです。その場合は、縦軸を音の高さにしても良いと思います。
大切なのは子どもたちが実際の経験を通じて、図形楽譜の特性を理解するところにあります。
図形楽譜が音符を使わないで自由に記述できるものであるということを、強調して下さい。
 
図形楽譜を実際に経験したあとは、もっと複雑な図形楽譜の例をみんなで見ます。
使う図形楽譜の例は、ネットで検索して出てきたもの等でかまいません。
プリントアウトしたものを回すなりして、実際にどんな図形楽譜があるのかを見てみます。
また、私が事前に書いた図形楽譜についても例として見せました。
こちらについては、聴いた音と描いた絵との組み合わせで見せることができるので、例として優れていると思います。
べつにどんな絵でも良いのですが、私が描いたものはこんな感じだったと思います。

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いよいよメインの活動、図形楽譜を使った作曲活動に入ります。
5・6人の班に分かれて行うのですが、各班テーマが与えられて、そのテーマに沿って作曲するということにしました。
テーマは「お化け屋敷」や「海の世界」などがありました。
各班はそのテーマのもと、手持ちの楽器を使った作曲活動を行います。
もちろん、作曲活動は記譜と同時に進められます。
記譜は縦横1メートルほどの紙に、マジックを使って行いました。
どうやって良いのかわからない、というような班についてはこちらが積極的に入って、実際にやってみます。
身の回りの物を使って音楽を作るみたいなことは、子どもたちはほとんどやったことがないので、戸惑うが多いかもしれませんが、それはこちらが思い切って示してあげれば良いだけです。
図形楽譜の見映えについては、特に気にする必要はありません。
ネット上にある美しい図形楽譜とは似ても似つかない、芸術性の全くない図形楽譜が出来上がるかもしれませんが、そもそも絵の上手さを求めている活動ではないので気にする必要はありません。
もし美しさを求めるのならば、繰り返し推敲を重ねるかたちでプログラムを設計して下さい。
 
楽譜が出来上がったところで、発表を行います。
各班前に出て、作った曲を図形楽譜を見ながら演奏を行いました。
かなり前衛的な演奏ばかりになりましたが、子どもたちはみな真剣な眼差しで耳を澄ましていたと思います。
演奏が終わったところで、図形楽譜についての説明をしてもらいます。
どの絵がどの音を表していたのかを中心に説明してもらうのですが、すると図形楽譜の意味がどんどん明らかになっていきます。
ここが、このプログラム最大の山場なのでしっかりやってください。
大切なのは、絶対に演奏や絵を否定しないことです。
良い演奏になるかどうかは、指導者がいかに子どもの言葉を引き出せるかどうかにかかっていると思います。
 
以上がこのプログラムの簡単な流れです。
全ての活動を含めて2時間ほどで行いましたが、時間的には非常に厳しいものがありました。
本来は2回、3回に分けて行うべき内容だと思います。
また、図形楽譜を使った作曲も、1度だけではなく2度3度続けていくことによって、記譜の方法も洗練されていくと思いますし、また身の回りの音を音楽の一部として聴くという行為についてもどんどん慣れ親しんでいけると思います。
 
最後に、このプログラムをつくるにあたって参考にした本をあげておきます。
内容の詳細については、また後日行いたいと思います。 
 

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