世の中

教育などについて考えたことを書きます

読み聞かせについての話1

 ここ数年、教育関係の仕事に携わっていたこともあって、幸運にも子どもたちに絵本を読み聞かせる機会に恵まれてきた。少し、そういった話題についても書いていきたいと思う。

 

 ここ数年の間で、読み聞かせに対しての関心が非常に高くなったように思える。それは単に私が読書教育に関心があって、そういったことを学び始めたからなだけなのかもしれないが、しかし図書館などで熱心に絵本を選んでいる母親の姿などを見かけたり、あるいは絵本の読み聞かせを中心としたクラス経営に取り組む先生が出現したりしているのを見ると、やはり全国的に読み聞かせに対する関心は高まってきているのではないかと感じられてしまうのだ。

 

 絵本の読み聞かせの良いところというのは、実感として幾つかある。

 まずひとつは、これは未就学児から低学年児童に特に言えることだが、語彙が増えるということが挙げられる。絵本というのは当たり前だが、絵が中心の表現だ。その言葉が表しているものや状況が、すぐそこにあって確かめられるというのは、語彙を増やすには非常に適している環境である。読み聞かせに限らず、子どもがひとりで絵本をめくっていたとしても、この長所は十分に機能するだろう。

 ふたつ目は、1冊の本のなかにある物語を手軽に、リアルタイムに共有できるというところだ。娯楽の種類が細分化してしまった今の時代において、人と何かを共有できる機会というのは昔に比べて非常に少なくなってしまっている。

 それは、大人だけでなく子どもにしろ同じことだ。子どもたちの会話は、意外なほどに話題が限られている。そういう時代において、絵本の中に展開される物語や感情を共有できるというのは、繋がりを強くするという点で、非常に大きい。例えば同じ笑いを共有するだけで、教室の中の雰囲気は一気に柔らかくなるものだ。

 3つ目は、コミュニケーションツールとしての効果が期待できるという点である。読み聞かせというのは、作品の種類によるところもあるが、一方的に読んで聞かせるだけで終わるものではない。例えば思わず声を上げてしまった子どもの言葉を取り上げて、逆に質問をしてみるとか、あるいは物語がそこから先、どうなるのか少しみんなで考えてみたりだとか、そういったことを簡単にできるというのが絵本の魅力でもあるのだ(ちなみにこういった読み聞かせを「考え聞かせ」といったりする)。読み終わったあとに感想を共有したり、物語の解釈を行うのも良いだろう。

 

 以上、とりあえず自分の実感としての長所を3つ挙げたが、他にもまだまだ長所というのはたくさんある(聞く姿勢をつくったりできるなど)。また、家庭で行う場合は、友だちとのコミュニケーションについてはできないものの、親と子の間でのコミュニケーションツールとして役に立つ部分での機能は非常に大きいのではないだろうか。特に、考え聞かせについては、家庭でも十分に行うことができるものだ。

 

 最後にもうひとつ、絵本をつかった活動を成功させるコツは、読み手自身がその絵本の魅力を語れるかどうかにある。考えてみればわかることだが、魅力を語れない絵本をつかって活動を行って、上手く行くはずがないのだ。

 そして、必ずしも物語の解釈を第一義に考えなければならないわけではないし、ときには物語から大きく脱線して、会話を中心に読み聞かせを行った方が上手くいくときもある。絵本を読み終えたあとの感想の述べ合いを中心にした方が、活動として充実することもある。つまり、そういった「自由さ」が絵本の読み聞かせの魅力だと思えるのだが、どうだろうか。

 

 ちなみに、考え聞かせの詳しい説明については、以下の本に書かれています。

リーディング・ワークショップ?「読む」ことが好きになる教え方・学び方 (シリーズ《ワークショップで学ぶ》)

リーディング・ワークショップ?「読む」ことが好きになる教え方・学び方 (シリーズ《ワークショップで学ぶ》)