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Childiscについて その2 スッパマイクロパンチョップ

今日はChildiscの発足に大きく関わった音楽家スッパマイクロパンチョップについて。

 

自分とスッパマイクロパンチョップの出会いは、さかのぼればChildiscの最初のコンピ『Childisc Vol.1』になるのだろうけど、前にも書いたとおり、当時の自分にとってこのコンピはほとんど理解できない代物で、彼の音楽についてもその良さをほとんど理解することができなかった。彼はコンピ直後のアルバムアーティスト第1弾として『目の前にあったよ』をリリースしたぐらいの看板アーティストだったのだけど、当時の自分はあまりにコンピの内容が理解できなくて、彼のアルバムのみならず、他のChildiscのアーティストの作品のほとんどをパスしていた状態だった。そのころスッパマイクロパンチョップの作品で、発売とほぼ同時に買ったのは確か2000年の『グー』ぐらいじゃないだろうか。この作品についても、数曲を除いてあまりどう反応して良いのかよくわからず、とにかく自分の中でスッパマイクロパンチョップは長い間、Childiscの中でも「アクが強い」「よくわからない」音楽だった。じゃあどの時点でその音楽性を理解できたのかというと、これがかなり先の話で、2003年の1月31日に京都メトロで行われたChildiscのイベント『移動遊園地』がそのときだったりする。

 

 

2003年というとChildisc発足からもう5年が経過しているわけで、その頃にはもうChildiscのやりたいことや価値観をかなりの部分で理解できるようになっていたのだけど、スッパマイクロパンチョップについては何か先入観みたいなのがあって、いまいち前向きに聴くことができなかった。それがストンと理解できたきっかけが、この『移動遊園地』というイベントだった。

 

この『移動遊園地』というイベントは、確かChildiscの一区切りを祝うために催されたもので、出演者はアキツユコにアサオキクチ、Assembler名義の竹村延和、Slowly Minute.、Water Form、そしてスッパマイクロパンチョップ(ちなみに同じ年の9月20日には福岡で第2回の移動遊園地が開かれている)。当時の自分はこのイベントのことを本当に楽しみにしていて、そのときのドキドキ感だとか、イベントの最中の幸福感だとかは今でもはっきり覚えているぐらいなんだけど、中でも衝撃的だったのがスッパマイクロパンチョップのライブだった。

 

このときのスッパマイクロパンチョップはいわゆる「電子スッパ」と呼ばれるシンセを即興でいじりまくって変化させまくるスタイルで、全くの予備知識なしで見たこともあり、そのライブはかなりの衝撃だった。何をやっているのかわからなかったし、動きだとかそういったものも含めて、自分がそれまで聴いてきた音楽とは何もかもが違っていた。既存の手法みたいなのはほとんど存在せず、あるのは音とそれに対する反応だけ、という感じで、その原始的な関係性は、大げさながら自分の音楽観といったものを根底から覆すようなものだった。おまけにそれだけエネルギッシュなライブをやったあと、彼は同じようなテンションでDJを始め、またそれが衝撃的なぐらい無節操で、聴いていて鼻血が出そうなぐらいで、いったいこの人は何なんだろうかと、良い意味で呆気にとられるばかりだった。

 

彼の音楽観みたいなのが理解できたのは、たぶんこのときが最初だったのだと思う。それはもうホントに「ああこういうことだったのか」と正に腑に落ちる感じで。とにかく彼のその「音に対する姿勢」みたいなものに衝撃を受けた自分は、イベント終了後、会場で売っていた彼の1st『目の前にあったよ』を買って帰途に着いた。そして聴くのを待ちきれなかった自分は、電車の中、すぐさま封を開けて持っていたウォークマンでその音にじっくり耳を澄ますことにしたのだけど、そのときイヤフォンから聞こえてきた音は、先ほどのライブとはまた全然違って非常に繊細なもので、すぐさまその美しさや温かさの虜になってしまったことを覚えている。そしてそれ以来、スッパマイクロパンチョップは自分にとってとても特別な音楽家になった。

 

その日を境に、自分はスッパマイクロパンチョップの他の作品についてもレコード店を回って集め始めたのだけど、なかでも衝撃を受けたのが、2ndアルバム『カエルに会えてよかった』だった。(つづく)